先のページでも見た通り、現在でも看護師はほとんどが女性の職場です。そして、女性が多いことでネックになってくるのは結婚や出産・育児の問題です。多くが女性であることから看護学校を出て看護師をしていても、結婚や出産を機に退職・転職してしまうケースが多く見られます。いろいろな機関が行っているアンケートでも、看護師の離職理由の上位には「結婚や出産」「家庭の事情」という項目がいつも入っています。
病棟勤務の場合、長時間勤務のうえにシフトには夜勤もあるためパートナーと生活を合わせにくかったり、小さい子供を育てながら続けるのが難しいのも確かです。女性にとって結婚や出産は人生の大きな節目であり、自分の生活の変化を機会に夜勤のない職場へ転職したりすることはもっともだと思われます。結婚しても仕事を続けるかどうか、仕事と生活のどちらを優先するかは個人の自由なので、元の職場としてもそう言われれば引き止めにくくもなります。
しかし、既婚女性が仕事をすることも珍しくもない現代で「結婚したら続けられない」「子供ができたら辞めるしかない」というのも少しおかしな話です。実際、小さい子供を育てながら勤務している看護師も多数いますが、やはり何かと苦労は多いようです。例えば、夫婦とも仕事のときは子供朝早くから夜遅くまで保育園に預けることになってしまい、寂しい思いをさせてしまうという話も聞きます。他にも、子供が病気になっても自分が休むのが難しいので薬を飲ませて無理に預けることもあるといいます。夫や自分の実家に子供を預けるにしても何かと負担をかけてしまうので、そう頻繁には頼めません。さらに、職場によっては職員が結婚することや子供ができたこと自体にいい顔をしない事もあり、特に忙しい現場では何かと肩身の狭い思いをすることもあるようです。
このような対応が起こる背景は、やはり現場の人手不足と仕事量の多さが考えられます。現在、多くの病院では看護師が不足していて、ほとんどの看護師がオーバーワークの状態にあります。そんな中で子供ができた、家庭の事情だと辞められたり抜けられたりすれば当然他のスタッフに迷惑がかかってしまいます。仕方ないとは分かっていても、自分が大変になる以上厭味の一つも出てしまうというのも人情だと思えます。
こういった問題に対処するため、日本看護協会や各病院では短時間勤務制度や労働条件の見直しなどを提案し、家庭を持っていても働き続けられるような工夫を行っています。また、結婚や子育てのために一旦看護師を辞めてしまった人を対象とした、復職支援の講習会も各地で行われています。様々な事情を持った看護師がそれぞれ無理なく働き続けられることも、「看護師にとっての良い職場」の一つではないでしょうか。